委員会リスト
活動状況
災害関連リンク
地質災害Q&A
災害時現地調査団
地質災害委員会
平成16年新潟県中越地震 :関連情報
←
新潟県中越地震情報に戻る
←Q&Aコーナーへ
●土砂災害
上砂正一 (明治コンサルタント(株),日本地質学会会員)
地球上の自然現象として地震や火山の噴火,大雨による洪水,台風など,毎年のように私たちにおそいかかり,建物,道路・鉄道や田畑におおきな被害を与え,多くの尊い人命が失われています.このような自然現象が引き起こす災害のことを「自然災害」といいます.自然災害のうち,地すべり,がけくずれ,土石流については「土砂災害」と呼んでいます. 平成12年5月8日に法律第五十七号として「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」が施行されました.この法律で「土砂災害」とは,『急傾斜地の崩壊(傾斜度が30度以上である土地が崩壊する自然現象をいう.),土石流(山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が水と一体となって流下する自然現象をいう.)又は地滑り(土地の一部が地下水等に起因して滑る自然現象又はこれに伴って移動する自然現象をいう.)(以下「急傾斜地の崩壊等」と総称する)を発生原因として国民の生命又は身体に生ずる被害をいう.』と定義しています.
●地すべりとは
上砂正一 (明治コンサルタント(株),日本地質学会会員)
地すべりの定義はいろいろありますが,次のような定義がされています.
地質的には,特別な地質条件のもとで,特別の地すべり粘土を作りながら基盤の岩石を含めた地塊がすべる現象をいう(小出 博).
地形から見た定義では,山地,丘陵における傾斜地で地塊の一部が下層のすべり面の滑材の助けを借りて重力の作用により滑動する現象をいう(谷口敏雄).
最近では,地すべり,急傾斜崩壊,土石流などを含む地すべり現象として,マスムーブメントと呼んでいます.
<マスムーブメント>
斜面上の物質(崩積土,土塊や岩塊,岩石など)が重力によって下の方に移動する現象でマスムーブメント(Mass movement)と呼ばれています.土塊などが移動する形態(運動様式)によって次のように分けられています.
葡行(Creep)
:斜面を構成する土壌や岩石が重力の影響を受けて長い時間をかけて
ゆっくりとした速度で下方に移動または変形する現象
滑動(Landslide)
:斜面上の土塊,岩塊が急速に移動する現象で,明瞭なすべり面
が形成されることが多い.
流動(Flow)
:土および風化岩、破砕された岩の一般的な流体的挙動
崩落(Fall)
:岩石や土塊,土粒子が崖から落下し粉体や個体で落下する現象
転倒(Topple)
:地層の境目等で分離した岩塊が前方に倒れ込む現象や座屈破壊に
よってすべる現象
<地すべりが発生するしくみ>
地すべりが発生するメカニズムは2つの原因があります.
1つは地形や地質,地下の状態(地層の傾きや風化の度合い,断層の有無,地下水など)が地すべりを発生させる条件が整っている(
素因
と言います)ところです.
もう1つは,地すべりを発生させる引き金で,自然現象(梅雨の長雨,雪どけ水,台風などの集中豪雨,地震など)や斜面を掘削したりあるいは土を盛ったり,トンネルの掘削,ダムに水を貯めるなど
人為的誘因
によって発生します.
すなわち,地すべりが発生しやすい地質的条件などの素因がある斜面に,地下水の上昇や地震力などが誘因となって起こります.
地震による地すべりを除いて,地すべりが発生する直前には斜面に割れ目ができたり,小さな崩壊が発生したり,湧水が濁るなどの前兆現象が発生することがあります.特に,大雨があったあとや雪どけ水が大量に発生したときなどは注意が必要です.
<急傾斜地の崩壊>
日本の国土のおおよそ70%は山地です.台地,丘陵地や山地などの急な斜面に雨水や雪どけ水がたくさんしみこむと,とつぜんがけが崩れ落ちることがあります.この現象を「急傾斜崩壊(がけくずれ)」といいます.斜面の傾斜が30度以上のがけ周辺にすんでいる人は要注意です.急傾斜の斜面で上のほうに張り出しているがけは,雨がふらなくても地震や強い風などでくずれることがあります.
急傾斜崩壊は地すべりと異なり,斜面の土塊が一瞬にして大量にくずれ落ちるため,崩壊が発生したら,ほとんど逃げることができません.
<土石流とは >
石とともに津波のように一気に下流へと流れていく現象です.土石流の先頭の部分は,大きな岩や流木などが集まってもり上がっています.土石流の速さは,規模,斜面の傾斜によって異なりますが,時速20〜40kmの速度になります.土石流は大きな運動のエネルギーを持っているため,土石流の通り道にあたるところは一瞬にして建物や畑を破壊してしまいます.
一般的に,土石流は集中豪雨が原因で起こりますが,地震や地すべりでくずれた土砂が川に流れ込んだり、雪どけ水が土砂とまじったりして起こることもあります.また,雲仙普賢岳に見られたように,火山の噴火でつもった火山灰に雨がふって起こる土石流もあります.
←
新潟県中越地震情報に戻る
TOP
Copyright © 2003 日本地質学会 All rights reserved.